社会学でよく引用される研究者(分布図/配置図)

また共引用分析をやってみました(詳しくは科学技術社会論(STS)研究者の分布図を参照)。今度は、世界の社会学者について、どのような近隣関係があるのか図示するのが目的。

British Journal of Sociologyに掲載された1992〜2006年の論文が元データ。なぜBJSか。アメリカの雑誌は、アメリカ系の社会学者の名前ばかりでよくわからん、というのが第一の理由です。その点、BJSはヨーロッパ系とアメリカ系の両方が挙がっていて、(日本の社会学から見て)バランスが合っている(気がする)。

今回は研究者間の距離を測る指標として、コサイン関数の逆数を用いた(Ciは研究者iが引用された回数、Cijは研究者iと研究者jが同じ論文中で引用された回数)。

 \frac{sqrt{c_i c_j}}{c_{ij}}

これだと、同時に引用された回数が0のときに無限大になってしまうので、その場合には共引用数が1以上の中での最大値52.65として処理した。

こうして得られた研究者どうしの共引用距離の行列を、多次元尺度法で分析して2次元に配置した。

共引用分析の常として、近いところにいる人が仲良しとは限らない。ただ、何らかの意味で近いテーマであることはある程度確かではないかと*1

で、分析結果。

まず対象としたのは、被引用回数12回以上(同一論文での複数引用は1回とみなす)の著者100人。

ちなみにベストファイブは順に、ギデンズ、ブルデューヴェーバー、ゴールドソープ、ベック。ギデンズはともかく(イギリスだからね)、階級・階層論に関わっている人ばかりだな。

名前 引用回数 コメント
ABERCROMBIE N 16  
ALBROW M 13  
ALEXANDER J 20  
ANDERSON B 17  
BAUMAN Z 47  
BECK U 52  
BECKER G 18  
BELL D 20  
BERGER P 20  
BLAU P 16  
BOUDON R 12  
BOURDIEU P 75  
BREEN R 18  
BRUBAKER R 13  
CALHOUN C 16  
CASTELLS M 30  
COHEN J 17  
COHEN S 16  
COLEMAN J 26  
COLLINS R 28  
CROMPTON R 33  
DAVIS M 12  
DEX S 14  
DOUGLAS M 18  
DURKHEIM E 42  
EISENSTADT S 13  
ELIAS N 31  
ELSTER J 17  
ERICSON R 12  
ERIKSON R 37  
ESPINGANDERSEN G 20  
FEATHERSTONE M 15  
FOUCAULT M 42  
GALLIE D 19  
GARFINKEL H 20  
GEERTZ C 12  
GELLNER E 22  
GIDDENS A 109  
GOFFMAN E 28  
GOLDTHORPE J 66  
GOULDNER A 18  
HABERMAS J 41  
HAKIM C 26  
HALL S 25  
HALSEY A 24  
HEATH A 30  
HELD D 12  
HIRST P 14  
HOBSBAWM E 17  
JENKINS R 12  
JESSOP B 15  
KUMAR K 13  
LASH S 26  
LATOUR B 27  
LEWIS J 16  
LIPSET S 20  
LOCKWOOD D 26  
LUHMANN N 28  
LYOTARD J 16  
MANN M 27  
MANNHEIM K 12  
MANNING P 14  
MARSHALL G 34  
MARSHALL T 22  
MARTIN J 12  
MARX K 24  
MCRAE S 14  
MCROBBIE A 13  
MERTON R 23  
MEYER J 13  
MILLS C 26  
MOUZELIS N 16  
OFFE C 16  
PAHL R 20  
PARKIN F 12  
PARSONS T 39  
PUTNAM R 15  
ROSE N 22  
RUNCIMAN W 13  
SAUNDERS P 21  
SAVAGE M 22  
SCHUTZ A 12  
SCOTT J 30  
SIMMEL G 24  
SKOCPOL T 13  
SMELSER N 12  
SMITH A 17  
SMITH D 25  
THOMPSON E 12  
TILLY C 18  
TURNER B 38  
URRY J 15  
WADDINGTON P 14  
WALBY S 17  
WALLERSTEIN I 18  
WEBER M 72  
WILLIAMS R 17  
WRIGHT E 19  
WRONG D 14  
YOUNG M 12  

次に、多次元尺度法で分析した結果。グルーピングはてきとうです。というか、知らない研究者が多すぎる・・・。もっと勉強せねば。

あるいは、グルーピングなしのはこちらからどうぞ。

ざざっと見た感じだと、以下の7つに分けられるのではないかと。

  1. 社会変動論:「近代化とは何か」を全体社会(?)の歴史分析から捉える。あるいは、ドイツ系。
  2. ポストモダン社会論:ポストモダン社会やそこでの諸問題、ナショナリズム現象を分析。あるいは、フランス系。
  3. ミクロ社会学:シンボリック相互作用論・現象学的社会学エスノメソドロジー+デュルケム社会学儀礼)+儀礼に注目した歴史分析。
  4. マクロ社会学:同時代的な視点からの大きな社会現象の分析。あるいは、アメリカ系。
  5. 合理的選択理論:やや広めに、方法論的個人主義という形で括ってみた。
  6. 経験社会学:実証系で重要な論者が集まっている。階層研究が多いが、ラベリング論のBECKERもいる。ちなみに、ASRやAJSを使って分析すると、こちらが主流になる。
  7. 福祉国家論・公共社会学:「富をいかに再配分し、弱者救済するべきか」を理論的・経験的に考える。

うーん、あんまりうまくないかなあ。科学社会学ほど業界になってないから色々と難しい。

それと、上の表は正確には研究者の受容されたイメージの分布図だね。有名な人はだいたい多様な面を持っているが、上の表では引用される文脈でのみ位置づけられている。あるいは、ブルデューアメリカ系の中にいるのは、彼がアメリカ流の研究をしていたことではなく、彼の研究がアメリカで広く受容されていることを示唆している(たぶん)。

*1:とはいっても、一側面からの分析にすぎないので、「これが世界の社会学の現状だ」などと、あんまりマに受けすぎないでくださいな。念のため。