科学技術社会論(STS)研究者の分布図

科学社会学、STSでよく引用される研究者の続き(みたいなもの)。

科学技術社会論STS)・科学社会学のトップジャーナルにおいて、どの研究者とどの研究者が一緒に引用されることが多いかを調べる。似たような研究ほど同時に引用されることが多いと考えられるから、これを調べることで、いまどのような研究潮流があるのか、大まかに見て取ることができるはず。

とはいっても、あんまり真剣にやっていないので、参考程度に。

元データは前回記事と同じ。Social Studies of ScienceScience, Technology & Human Valuesから(1995〜2006年末ごろ)。上位60人(被引用回数32回以上)を分析対象とする。

研究者同士の距離は以下の式で測る。

(研究者Aの被引用回数*研究者Bの被引用回数)^0.5/(AとBが同時に引用された回数+0.2)

0.2は、距離が無限大にならないように、かといって逆転現象も生じないように適当に放り込んだ(このへんがいい加減)。

で、こうして得られた距離行列を、多次元尺度法を用いて分析して、結果を2次元上にプロットする。分析にはSPSSを用いて、結果をExcelを使ってプロットした。

多次元尺度法については下記サイトを参考にした(だけ。なので、ここで使うのが妥当かどうか自信なし)*1

http://www.interq.or.jp/pluto/tunes/scale.html

さて、分析結果だが、おおむね以下の5グループに分けられた。

  1. 科学哲学、認識論、エスノメソドロジー(イギリス・フランス系?)
  2. 科学知識の社会学(SSK)、アクターネットワーク理論
  3. 科学技術の歴史的・社会学的研究
  4. リスク社会論
  5. 科学社会学の古典的文献(アメリカ系?)

抽象的な認識論的研究(1)と、具体的な対象を取り上げた研究(3)の間に、両者をつなぐ理論(2)が存在している、というのが中心的な構造。

そして、こうした中心的な構造とはやや離れて、リスク社会論(4)が存在している。リスク社会論は、どちらかと言えば具体的研究(3)と距離が近い。

科学社会学の古典(マートン、バーンズ)については、認識論系とアメリカ系の両方に引用されるから、真ん中あたりに来ている。Greg Myers(Writing Biology: Texts in the Social Construction of Scientific Knowledge)も同様か。

ちなみに、こういう分析のことを科学計量学の分野では「共引用分析」と呼ぶらしい。

研究評価・科学論のための科学計量学入門

研究評価・科学論のための科学計量学入門

初めから調べておけばよかったのだが、この領域では以下の2つで距離を測るのが主流らしい。で、その結果を、クラスター分析や多次元尺度法にかける(70頁)。コサイン関数をちょっと(非論理的に)いじくったのが、上で私が使った分析法ですな。

Jaccard係数

 \frac{c_{ij}}{c_i + c_j - c_{ij}

コサイン関数

 \frac{c_{ij}}{sqrt{c_i c_j}}

*1:基本的に、これも主成分分析・因子分析・コレスポンデンス分析と同じ系列に属するものらしいので、そのうちまとめて数学的なことを勉強する予定(いつになるやら)。