事故がなくても渋滞が起きるのはなぜか?
- 作者: 西成活裕
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/21
- メディア: 単行本
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おもしろい。自然渋滞はなぜ起こるのか。
いつも駅のエスカレーターを歩いて上がりながら、みんなが等速度・等距離でちゃきちゃき上がれば*1、こんなノロノロにならないのになあ、誰が悪いんだ?、と思っている方にオススメの一冊。別にそんなに悪い人がいなくても、ノロノロになってしまうことはあるんです*2。
ポイントは、「自由走行」と「渋滞」の間に、「メタ安定」という、密度的には渋滞になる状況なのに、ドライバーがうまく頑張って自由走行の速度で走っている状態があるという点。でも、誰かがブレーキを踏んだりしてメタ安定が崩れて、渋滞に陥っていく(相転移)。
密度が高まっていくと、ほんのささいなことでも渋滞に陥りやすくなる。ごくわずかなのぼり坂(サグ)とか、夕陽とか、へたなドライバーとか、トンネルとか。で、確率的にいって数分のうちに渋滞になる。
こういう話を、セルオートマトンという手法を用いて分析しています。
以下はとりあえずメモ。
平均速度(m/s)×交通密度(台/m)=交通流量(台/s)
交通密度が横軸、交通流量が縦軸の基本図。左上ほど高速度、右下ほど低速度。
ASEP(元のモデル)=1方向に進んでいく。一つ前のセルが埋まっていたら1回休み、一つ前のセルが空いていたら進む。
「スロースタートルール」のモデル。1つ前のセルが埋まっていたら、2回休む。イメージとしては、止まった車は動き出すのに時間がかかる(物理的にも人間的にも)。
これによって基本図のグラフが人型になる。
- 「人」の字の交点の左下の部分は自由走行。
- 「人」の字の交点の右下の部分は渋滞。
- 「人」の字の交点から右上に向かって突き出た部分がメタ安定。
著者も書いているけど、こういう研究は本当に楽しそうだなあ。新しい数学を使った数理モデル・シミュレーションと、実世界の問題が(部分的にだが)見事に対応している。こういうのを見ると、自分も一度は数理モデルを使った社会学の研究をやってみたくなる。